F4065【短刀】無銘
江戸時代初期は、徳川家康の天下統一とともに戦乱が終息し、平和の世が訪れた時代です。しかし、武士たちは常に備えを怠らず、護身用の短刀を身に着ける習慣を続けていました。
この無銘の短刀は、そんな江戸初期の空気を色濃く映し出しています。菖蒲造りの刀身は、細身で鋭さが際立ち、実用性と美しさを兼ね備えた造形。板目が詰み、直刃に互の目足が入る刃文がかつての匠の技を感じさせますが、切先から12cmほどが素人研ぎのため、地鉄や刃文は見えづらくなっています。それでもさびや刃こぼれはなく、保存状態は良好。
生茎には刃上がりの栗尻が見られ、銅二重ハバキが刀身を支え、黒塗り鞘に木製の柄、丸形の鉄ツバ、そして下緒付きと、質実剛健な仕様です。
江戸初期は、武士が日常的に刀剣を携えた時代。戦乱の終焉と平和の兆しの中、武士の身を守る実用品として重宝された短刀の佇まいが、今もこの一振に息づいています。素人の手による研ぎですが、その素朴さが当時の空気を伝える貴重な逸品です。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 江戸時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 154g
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- 刀長
- 28.5cm
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- 反り
- 0.6
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- 元幅
- 2.3
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- 元重
- 0.4
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- 先幅
- 1.5
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- 先重
- 0.3
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- 登録番号
- 福井県 第23585号
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- 登録年
- 平成25年