コラム
日本刀の「鑑定書」の見方|保存刀剣・特別保存刀剣の違いと申請方法
いつも「日本刀市場」をご利用いただきありがとうございます。
10回連続コラム「失敗しない日本刀選びと、安心して楽しむための基礎知識」の第4回目は、日本刀の「格付け」を知るうえで欠かせない鑑定書(かんていしょ)について解説します。
「鑑定書がついていない刀は、偽物なんじゃないか?」——そう不安に思う方は少なくありません。しかし、結論からお伝えすると鑑定書がない=偽物、ではありません。むしろ、鑑定書のない一振りには、これから自分の手で価値を高めていく楽しみが詰まっています。
このコラムでは、鑑定書の4つのランクの違いから、自分で鑑定に出す方法・費用・期間まで、初めての方にもわかりやすくお伝えします。
1. 日本刀の鑑定書とは?4つのランクを知ろう
日本刀の格付けは、複数の機関による鑑定に基づいて定められています。そのなかでも最も権威ある機関が、公益財団法人日本美術刀剣保存協会(略して「日刀保(にっとうほ)」)です。
日刀保が発行する鑑定書には、現在4つのランクがあります。

各ランクの違い
| ランク | 読み方 | 内容 |
|---|---|---|
| 保存刀剣 | ほぞんとうけん | 江戸時代までの作で銘の正しいもの、または無銘でも年代・国・流派が指摘できるもの(明治以降の作は在銘で出来の良いものに限る)。多少のキズや疲れがあっても鑑賞に堪える刀が対象。「本物であり、文化財として残すべき価値がある」基本のランク |
| 特別保存刀剣 | とくべつほぞんとうけん | 保存刀剣のなかでも、さらに出来が良く保存状態の良いもの。格と資産価値が一段上がる |
| 重要刀剣 | じゅうようとうけん | 特別保存刀剣のなかでも特に出来が優れ、国認定の「重要美術品」に準ずる価値があると判断されるもの |
| 特別重要刀剣 | とくべつじゅうようとうけん | 重要刀剣のなかでもさらに出来が傑出し、国認定の「重要美術品」に相当、または国指定の「重要文化財」に準ずる価値があると判断される最高ランク |
知っておきたい審査の共通ルール詳細は日本美術刀剣保存協会の審査基準をご確認ください。
なお、1982年以前の旧制度で発行された「貴重刀剣」「特別貴重刀剣」「甲種特別貴重刀剣」の鑑定書は、現在は効力がないとされています。お手元の刀にこれらの鑑定書が付いている場合は、現行制度で改めて審査を受けることが推奨されます。
2. 「鑑定書なし」は不利?——むしろ”格上げ”の楽しみがある
「日本刀市場」で扱う比較的お求めやすい価格帯の刀には、まだ鑑定書がついていないものも多くあります。しかしそれは「価値がない」のではなく「まだ公的な鑑定を受けていないだけ」というケースが大半です。
当店ではあえて鑑定書の申請代行は行っていません。それは、お客様ご自身に「自分の刀が認められる瞬間」を味わっていただきたいからです。
未鑑定の刀を手に入れ、自分で鑑定に出し、後日「保存刀剣」の鑑定書が手元に届く——これは、所有者としてこれ以上ない喜びであり、刀の価値を自分の手で高める「格付け(ステップアップ)」の楽しみでもあります。
3. 鑑定に出す方法と費用|日刀保の審査フロー
「自分で鑑定に出すのは難しそう」と思われるかもしれませんが、現在はインターネットからの事前申請制となっており、手順を知ればスムーズに進められます。協会の会員でなくても審査を受けることが可能です。
審査の実施回数(2025年度)
| 審査区分 | 実施回数 |
|---|---|
| 保存刀剣・特別保存刀剣 | 年8回 |
| 重要刀剣 | 年1回 |
| 特別重要刀剣 | 2年に1回 |
申請のステップ
インターネット申請または書面申請のいずれかで予約番号を取得します。
予約番号通知書、刀剣現物、登録証原本、すでにある場合は鑑定書原本を、指定の受付日に窓口持参または郵送で提出します。
数ヶ月後に結果通知書が届きます。審査料を支払い、刀の返却を受けます。
合格した場合、結果通知から数ヶ月後に正式な鑑定書が届きます。
審査料の目安(保存刀剣・刀剣/2025年度)
| 審査結果 | 会員料金 | 非会員料金 |
|---|---|---|
| 合格 | 35,750円 | 41,250円 |
| 不合格 | 14,300円 | 19,800円 |
| 保留 | 無料 | 無料 |
※税込価格。特別保存・重要・特別重要は別料金体系です。詳細は日本美術刀剣保存協会の審査料ページをご確認ください。
4. 「偽銘(ぎめい)」と鑑定書の関係
刀を検討するうえで知っておきたいのが「偽銘(ぎめい)」という言葉です。
有名な刀工の作品に見せかけるため、後世の誰かが勝手にその名を刻んだものを偽銘と呼びます。日刀保の鑑定審査では、偽銘と判断された刀は合格できません。
しかし重要なのは、偽銘=刀そのものが偽物ではないということです。銘は偽物でも、教育委員会発行の「登録証」がある刀は、伝統的な材料と製法でつくられた正真の日本刀であることに変わりありません。室町時代や江戸時代につくられ、数百年の時を超えて大切に伝えられてきた一振りであるケースがほとんどです。
ポイント銘が偽物でも、刀そのものは本物。偽銘の刀は鑑定書こそ取れませんが、歴史的・美術的な価値はしっかり残っています。
5. 鑑定書がないからこそ「気楽に」始められる
最初から鑑定書が付いている刀は、その分どうしても価格が上がります。
- 「まずは本物の日本刀に触れてみたい」
- 「手入れの練習も兼ねて、気兼ねなく扱える一振りが欲しい」
そんな方にとって、未鑑定の刀は最高の入門編です。気軽に手にして、所有する喜びを知り、自分の目で良し悪しを判断する——その経験を経てから、いつか鑑定に出してみる、というステップも十分に楽しめます。
鑑定書はあくまで一つの指標です。最終的には、その刀を見て自分自身がどう感じるかを大切にしてください。
まとめ:鑑定書は「ゴール」ではなく「楽しみ方の選択肢」
| 鑑定書あり | 鑑定書なし |
|---|---|
| 価値が公的に証明されている安心感 | これから格付けに挑戦できる楽しみ |
| 売却時の評価がつきやすい | 価格が手頃で入門に最適 |
| 美術品コレクションの中核に | 気兼ねなく手入れ・鑑賞ができる |
「日本刀市場」のラインナップは、何十万、何百万円という高嶺の花ばかりではありません。まずは手の届く一振りから、あなたと刀の歴史を始めてみませんか。
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