F4063【短刀】無銘
江戸時代末期、徳川幕府の終焉とともに、日本刀の世界もまた変革の波に揺れていました。そんな激動の時代に生み出されたこの無銘の短刀は、華美な銘を持たずとも、その姿に歴史の重みを宿しています。刀身全体が残念な事に素人研ぎの為、地鉄や刃文の美しさは見えませんが、さびや刃こぼれはなく、姿、形は美しく仕上がっております。
鎬の線が見えませんが、当時の刀匠の技術と意匠が反映されたもの。茎には加州系を思わせる左上がりのヤスリ目が刻まれ、銀の祐乗ハバキが品格を添えています。3/2皮巻に1/3鉄巻変わり鞘という凝った意匠は、所有者の美意識を物語り、軍配目貫は戦乱に備えた武家の覚悟を象徴します。
江戸末期は、侍たちが身の回りの武具に最後の輝きを込めた時代。この短刀もまた、歴史を物語る静かな証人です。素人の手による研ぎであっても、その素朴さや温もりは、現代の鑑賞者に一種の親しみを感じさせます。江戸の終焉を目前に控えた刀剣文化の息吹を、この短刀にぜひ感じ取ってください。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 江戸時代末期
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- 刃紋
- なし
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 168g
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- 刀長
- 29.5cm
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- 反り
- 0.3
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- 元幅
- 2.6
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- 元重
- 0.5
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- 先幅
- 1.7
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 愛知県 第69352号
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- 登録年
- 平成16年