F4064【短刀】無銘
室町時代末期は、応仁の乱以降、戦国時代へと突入した日本史上でも特に動乱の時代でした。武士たちは絶え間ない戦に備え、実戦に耐えうる刀剣の需要が高まり、華美な装飾よりも実用性が重視されるようになりました。
この無銘の短刀は、まさにその時代背景を映し出しています。全体に素人研ぎが施されてしまい、地鉄や刃文の美しさは残念ながら見えませんが、さびや刃こぼれはなく、実用の名残を感じさせます。鵜の首造の形状は、護身用や懐剣として武士が常に携えた短刀らしい造りで、板目肌に直刃と湾れが交じる刃文は、かつての刀匠の技を偲ばせます。生茎に栗尻、ヤスリ目は見えず、銅ハバキが装着され、簡素ながらも時代を感じさせる風合いを保っています。
研ぎ師ではなく素人の手による研ぎであることから、観賞用というよりは当時の武士が日常的に携えた短刀の質実剛健さを物語ります。戦国乱世に生きた武士たちが、己を護るために持ち歩いた実用品の一端に、今再び触れてみてはいかがでしょうか。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 室町時代末期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 2
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- 重量
- 95g
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- 刀長
- 30.2cm
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- 反り
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- 元幅
- 1.6
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- 元重
- 0.6
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- 先幅
- 0.9
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 東京都 第189475号
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- 登録年
- 昭和49年