E4088【拵付脇差】無銘
本脇差は、銘こそありませんが、その造りや地鉄、拵の意匠から江戸時代初期の作と推察される、時代の風格を宿した一振です。江戸初期は、戦国の世が終わり、泰平の時代が到来したことで、刀剣の役割が戦場での武器から、威厳や身嗜みとしての側面を強めていった時期でした。このような時代背景のもと、本作も実用性と美的価値を兼ね備えた脇差として生まれたものと考えられます。
刀身は鎬造・庵棟、地鉄は板目が流れ、柾目がかる風合いで、古風な趣を醸し出します。刃文は直刃を基調としながらも、細やかな乱れが連なり、穏やかながらも動きを感じさせる刃取りが魅力です。中切先を備えた姿は、武士の日常において実用を意識して鍛えられたことを物語っています。生茎は栗尻。銀着せのハバキが気品を添えています。
拵えは、丸形の透かし鉄鍔、縁金、頭金、鏢(こじり)葵の葉と唐草の揃い。黒塗りの艶鞘には二葉葵が施されています。二葉葵は下鴨神社のご神紋とされ、徳川家の三つ葉葵の御紋の由来は、下鴨神社の氏子だったからと言われています。
目立つ傷や刃こぼれはなく、保存状態も良好。銘が無いことでかえって、刀身そのものの造りや拵との調和に目を向ける楽しみがある一振です。時代の息吹を感じながら、静かな存在感をお楽しみください。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 江戸時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 325g
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- 刀長
- 44.4cm
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- 反り
- 0.7
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- 元幅
- 2.8
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- 元重
- 0.5
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- 先幅
- 1.7
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 新潟県 第3821号
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- 登録年
- 昭和26年