D4089【白鞘脇差】廣重
本脇差は、「武州下原住廣重」銘の江戸時代初期の一振です。廣重は、武蔵国の下原鍛冶の一派に属する刀工であり、実用刀として信頼を集めた一群の職人の一人です。下原鍛冶は戦国末から江戸初期にかけて、北条氏や徳川家に仕えたことで知られ、その堅牢で実用的な作風は、多くの武士に重宝されました。
鎬造・庵棟、板目肌の地鉄に、直刃を基調としながらもわずかに湾れごころを帯びた穏やかな刃文が特徴で、実戦における機能性と静かな品格を兼ね備えています。中切先を備えた姿は、戦国の名残をとどめながらも、泰平の世にふさわしい佇まい。茎はたなご腹に仕立てられ、時代の手ごたえを感じさせる造りです。
銀着せの菊ハバキが華やかさを添え、白鞘に収められた刀身からは、江戸初期の空気がしっかりと伝わってきます。多少の錆は見られますが、刃こぼれはなく、保存状態も概ね良好。鑑賞にも、歴史資料としても価値ある一振です。時代と地域色を宿したこの脇差を、ぜひご堪能ください。
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- 銘
- 廣重
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- 時代
- 江戸時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 415g
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- 刀長
- 48.7cm
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- 反り
- 1
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- 元幅
- 2.8
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- 元重
- 0.7
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- 先幅
- 1.7
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 東京都 第114631号
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- 登録年
- 昭和38年