D4093【白鞘脇差】無銘
本脇差は無銘ですが、その造りや風貌から江戸時代初期に製作されたものと推察される一振です。徳川の世が始まり、戦国の喧騒が収まりつつあったこの時代、刀剣はなお武士の魂として重要視され、実用性とともに美的完成度も求められるようになりました。
鎬造・庵棟の典型的な造りで、流れるような板目肌の地鉄に、変化に富みながらも鮮明な互の目の刃文が美しく焼かれています。互の目には高低のうねりがあり、焼き幅の変化も豊かで、見る角度によって異なる表情を見せる、実に見応えのある仕上がりです。大切先が刀姿に力強さを与え、戦国末から江戸初期への過渡期を生きた武士たちの気風を感じさせます。
茎(なかご)は生茎で、栗尻。横にかけられたヤスリ目が見え、保存状態も良好です。銀製の祐乗ハバキが上品な印象を添え、真新しい白鞘に丁寧に収められています。
華やかさよりも、刀本来の美と機能美が光る一振。刀身そのものの技と風格をじっくり味わうことができます。歴史と技巧が静かに息づく、武士の時代を映す脇差です。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 江戸時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 429g
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- 刀長
- 52.4cm
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- 反り
- 1
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- 元幅
- 2.9
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- 元重
- 0.6
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- 先幅
- 1.8
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- 先重
- 0.5
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- 登録番号
- 東京都 第266130号
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- 登録年
- 平成6年