E4060【拵付脇差】無銘
江戸時代初期に製作されたと推定される無銘の一振で、格式と美しさを兼ね備えた拵付の脇差です。江戸初期は戦乱の時代が収束し、平和な世が訪れたことで、刀剣は戦うための道具から、武士の身分や美意識を象徴する存在へと変化しました。本刀は、そうした時代背景の中で誕生した、実用と装飾性を融合させた作品といえます。
刀身は鎬造・庵棟のしっかりとした構造で、詰んだ板目肌が整い、落ち着いた質感を見せています。刃文は直刃を基調にしながら湾れが交じり、静と動の調和を感じさせる優美な焼き。大切先の形状も力強く、武用としての品格も十分に備えています。茎は生ぶで剱形となっており、時代を感じさせる古格が漂います。
拵は、丁寧に仕上げられた七色貝散しの鞘が目を引き、光の加減で多彩な表情を見せる美しさが特徴です。丸形の鉄製鍔や銅ハバキとの組み合わせも品よくまとまり、刀身との調和が取れた上質な構成となっています。
実用性、保存状態、そして装飾性の三拍子がそろった江戸初期の好例。美術刀剣としての魅力に加え、格式ある拵が付属していることから、鑑賞用としても高く評価される一振です。歴史と美を楽しみたい方におすすめの逸品です。
-
- 銘
- 無銘
-
- 時代
- 江戸時代初期
-
- 刃紋
- 乱
-
- 目釘
- 1
-
- 重量
- 604g
-
- 刀身
- 54.1cm
-
- 反り
- 0.7
-
- 元幅
- 3
-
- 元重
- 0.7
-
- 先幅
- 2
-
- 先重
- 0.5
-
- 登録番号
- 神奈川県 第8688号
-
- 登録年
- 昭和26年