D4079【白鞘脇差】金重
室町時代初期は、南北朝の争乱が落ち着きを見せ、足利幕府による統治が安定し始めた時代でした。しかし、地方では依然として小規模な戦乱が絶えず、武士たちは自らを守るために実用性を重視した刀剣を求めました。
この銘「金重」の白鞘脇差は、そんな時代背景を色濃く映しています。平造りの刀身は、実戦での取り回しやすさを考慮した造りで、板目流れに柾目が交じる地肌が、美しい鍛えの技を伝えます。直刃に乱れが交じる刃文は、武士たちの気迫と刀匠の技術を感じさせ、大切先の力強い造形が、戦乱の時代に鍛え上げられた実戦刀の風格を宿します。生茎に栗尻、銀祐乗ハバキが装着され、細部まで丁寧な仕立てが施されています。また「濃州金重」の銘が刻まれ、薫山氏による鞘書が添えられており、日本刀剣保存協会設立者、初代会長である金重の名を今に伝えます。さびや刃こぼれのない良好な保存状態も特筆すべき点です。
室町初期の武士たちの実用性と美意識、そして日本刀文化の礎を築いた歴史が、この一振に凝縮されています。ぜひ手に取り、時代を超えた名工の技と歴史の息吹を感じてください。
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- 銘
- 金重
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- 時代
- 室町時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 338g
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- 刀長
- 41.6cm
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- 反り
- 0.8
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- 元幅
- 3.1
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- 元重
- 0.5
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- 先幅
- 2.1
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- 先重
- 0.3
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- 登録番号
- 埼玉県 第51312号
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- 登録年
- 昭和53年