D4091【白鞘脇差】無銘
この脇差は無銘ながら、造り込みや意匠から室町時代末期、すなわち戦国時代末の作品と見られる貴重な一振です。戦国の世は、常に命のやり取りが日常であったゆえに、刀は華やかな装飾よりも、実戦での機能性と頑丈さが最優先されました。本作もまさにその要素を備え、簡潔でありながら無駄のない造りに武士の実用精神が滲みます。
鎬造・庵棟の堅牢な構造に、板目肌がよく詰んだ地鉄。刃文は直刃を基調としつつも、わずかに乱れごころが表れ、見る者に静かな表情の変化を感じさせます。小切先の締まった姿は、脇差らしい鋭さと取り回しの良さを備え、実用性の高さを物語ります。
茎(なかご)は大磨上げで、横手のヤスリ目が残っており、長い時代を経た改修の跡が歴史を感じさせます。棒樋と添樋の位置や一つだけの目釘穴から元々の刀がとても長いものだったことがわかります。銅製のハバキも時代を反映する素朴な味わいがあります。
さび・刃こぼれはなく、保存状態は良好。室町末期の武士が帯びたであろう現実的な脇差として、歴史的価値と実用美をあわせ持つ一振です。コレクションや鑑賞にぜひおすすめいたします。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 室町時代末期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 263g
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- 刀長
- 37cm
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- 反り
- 0.9
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- 元幅
- 2.4
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- 元重
- 0.5
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- 先幅
- 1.6
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 和歌山県 第15511号
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- 登録年
- 昭和47年