E4146【拵付脇差】無銘
江戸時代初期に製作された無銘の拵付脇差です。刀身は鎬造・庵棟を備え、板目肌が流れつつ柾がかる地鉄に、互の目乱れの刃文が続き、時代の特徴を色濃く映し出しています。中切先を持つ端正な姿に生茎を残し、剣形を示す堂々とした造り込みは、江戸初期の武家社会における実用と美観の両立を物語ります。鷹の羽のように整ったヤスリ目も健在で、当時の職人の緻密な技を感じさせます。
拵も見どころの一つで、銅ハバキに麦わら変わり塗の鞘を合わせ、縁頭にはしじみと籠をあしらい、目貫には雄鶏と雌鶏が刻まれています。これらの意匠は、豊穣や吉祥を象徴する図柄として知られ、刀を佩く武士の守護と繁栄への祈りが込められていたと考えられます。実用刀でありながら、武家の美意識を映す拵えは、観賞用としても大変魅力的です。
なお、本作は「無銘」ながらも出来の確かさから、同時代に活躍した名工たちの流派を思わせます。刀剣乱舞に登場する刀匠では、江戸初期に名を馳せた肥前忠吉や美濃千手院派などが知られ、彼らの作と時代的に重なる点も興味深い部分です。
武家文化の黎明を支えた江戸初期の息吹を伝える一振。歴史的価値と拵の洒落味を兼ね備えた、コレクションにも最適な脇差です。
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- 銘
- 無銘
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- 時代
- 江戸時代初期
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- 刃紋
- 乱
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 328g
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- 刀長
- 41cm
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- 反り
- 1
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- 元幅
- 2.7
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- 元重
- 0.6
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- 先幅
- 1.9
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 埼玉県 第32099号
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- 登録年
- 昭和5年