D4176【白鞘脇差】菊紋
室町時代中期(15世紀前後)に製作されたと見られる「銘 菊紋」の白鞘脇差です。鎬造・庵棟の端正な姿に、小杢目が詰み流れ柾がかる地鉄がよく練られ、刀身には繊細な細直刃が冴え渡っています。小切先で均整のとれた姿は、室町中期における実用と美を兼ね備えた武用刀の特徴を示しています。
茎(なかご)は生ぶで残り、栗尻に仕立てられ、左上がりのヤスリ目が明瞭に残る点も注目されます。さらに、銀着せの菊文様ハバキを備え、銘「菊紋」と呼応する意匠は、当時の刀装具における美意識の高さをうかがわせます。
「菊紋」の刀工については詳細が伝わっていませんが、菊花は天皇家を象徴する格式ある意匠であり、刀工銘や装具に刻まれる場合、特別な意味合いを持つことが多く見られます。そのため、本脇差も単なる武器を超えた象徴性を帯びていた可能性があります。
ほっそりとした上品な姿と時代背景を備えた本作は、室町刀の研究資料としてはもちろん、日本刀美術の鑑賞用にも価値ある一振です。歴史的背景と美的完成度を兼ね備えた脇差を、この機会にぜひご堪能ください。
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- 銘
- 菊紋
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- 時代
- 室町時代中期
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- 刃紋
- 直
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- 目釘
- 1
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- 重量
- 412g
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- 刀長
- 51.3cm
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- 反り
- 1.8
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- 元幅
- 2.7
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- 元重
- 0.7
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- 先幅
- 1.5
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- 先重
- 0.4
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- 登録番号
- 山梨県 第13576号
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- 登録年
- 昭和47年